米澤穂信『インシテミル』
『ボトルネック』でこの作家を好きになった僕は、文庫化されていたこともあり『インシテミル』を手に取り、読むことにしたのだった。
読み始めると、設定やらなんやらミステリでいう密室モノであることがわかる。密室にいるのは12人。そう、密室ミステリにとって12人というのは重要な数字だ。
ミステリなので、ここであまりネタバラシをする訳にはいかない。よって筋に触れない範囲で書くが、この密室ものでは凶器との関連で多くのミステリの傑作が登場する。こういうのにミステリ・ファンは弱いのである。登場するミステリ名作の殆どを読んだことがある小生としてはわくわくして読んだのである。
この本についてはとても面白いと思ったし、綾辻行人の『十角館の殺人』のようなテイストもあり、綾辻はじめ、法月などなど京都のミステリ作家が好きな僕は非常に好感を持ったのだ。
この本は、『インシテミル〜7日間のデスゲーム〜』として、監督は中田秀夫で映画化されているという。キャストも悪そうではなかったし、レンタルでDVDを見たのであるが…
まるでダメ。ミステリ・ファンを全く無視した作り。無視されてもいいが、エンタテインメント作品として面白くない。あれだけのキャストでこれだけ面白くない作品作れるのはスゴイと毒舌吐きたくなるひどさ。このひどさは、監督というよりも脚本の酷さだな。鈴木智という脚本家で、『金融腐食列島・呪縛』で日本アカデミーの脚本賞の受賞歴もあるらしい。『金融腐食列島・呪縛』は見たが、全く印象に残っていないので、この脚本家と僕との相性がわるいのかもしれませんね。いや、ミステリに対して理解のない脚本家を当てたプロデューサーの罪も大きい。
設定の12人を10人に変えたり、出演者の凶器変えたり、出演者の年齢や職業まで変えて…ミステリの映画化でやりたい放題やってあのつまらなさ。ブログ書いて悪態の一つもつきたくなりますw キャストは決して嫌いではないのだけれどねー。
悪態ついたついでにもう一つ。エンディングロールでかかる曲。これも……でした。
原作はお勧めしますが、映画は全然薦めません。