KISHI BASHI 2014.06.25 渋谷クアトロ

On 2014年6月28日, in 音楽, by dubbrock

僕がKishi Bashiのことを知ったのはいつだったろうか。
彼がオブ・モントリオールやジュピター・ワンの一員として活動していたのを知ったのは、Kishi Bashiを認識してからのこと。

Kishi Bashiは、名前のK.IshibashiをKishi Bashiと表記する。1975年生まれ。
アメリカの大学で教鞭をとっていた両親のもとにアメリカ、シアトルで生まれ、アメリカで育った。見た目は日本人だがアメリカ人だ。でも日本語も喋れる。7歳でヴァイオリンを始め、バークリー音大を経て、2002年からはブルックリン、その後自分が生まれ育ったジョージア州ノーフォーク、最近は親交のあるオブ・モントリオールのメンバーも居るジョージア州アセンズに移って活動している。

僕がKishi Bashiから受けた最初のインパクトのひとつはNPRのタイニー・デスク・コンサートだった。この時点でKishi Bashiスタイルともいうべき、ルーパーを駆使したスタイルは出来上がっている。

このタイニー・デスク・トップ・コンサートと同時期にファースト・アルバム『151a』(いちごいちえ、とよみます)にはガツンとやられた。

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151a

Kishi Bashiは、ファースト以降もJoyful Noise Recordingsからリリースを重ねてきた。

ベイルートやトーキング・ヘッズ、ELOの曲をカバーした7インチのシリーズや「Philosophize In It! Chemicalize With It!」を7インチでリリース。「Philosophize In It! Chemicalize With It!」は美しいピクチャーディスクで。

これら7インチでリリースされた曲は日本独自編集盤『フィロファサイズ!ケミカライズ!』にまとめられた。これは
「Philosophize In It! Chemicalize With It!」が花王のコマーシャルに採用されたことも大きかっただろう。


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「フィロファサイズ!ケミカライズ!」

2014年のヴァレンタイン・デーには前年のヴァレンタインデー公演を収めたライヴ盤をJoyful Noise RecordingsよりDVD付きピクチャー盤でリリース、したがすでに完売。このライヴ盤については、電子雑誌『エリス』の6号で紹介しました。そして2014年4月に最新アルバム『Lighght』をリリース!

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ライト

ちなみに、上のジャケットは日本盤のみのもので、アメリカ盤は以下のもの。
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Lighght

さて、Kishi Bashiの音楽を、簡潔に表現できる言葉を僕は知らない。
ルーパーを使うアーティストは今でこそたくさんいるが、彼ほど上手に使っている人はいないように思う。
主にヴァイオリンを弾くKishi Bashiだが、他にも多くの楽器を演奏する。バークレーでジャズ・ヴァイオリンの音楽教育を受けた彼だが、彼の音楽はジャンルで括れるようなものではない。

ルーパーでヴァイオリンや声をループさせ重ねたり、さらにピッチを変えて重ねながらベーシックとなるリズムを作り出す。しかし、ルーパーというテクノロジーに頼っているのではなく、Kishi Bashiのそれはテクノロジーと共に肉体性も持つ。歌詞は知的でユーモラスなものもあるがけっして頭でっかちではない。ルーパーで生み出したものをバックにソロ演奏することもあれば、バンドサウンドの中でルーパーサウンドを織り込むこともある。
ほとんどの歌詞は英語で歌われるが、Kishi Bashiは響きの面白い日本語を曲に取り込むのも得意だ。
多くのライヴ活動を通じて培った声も大きな武器だ。声とヴァイオリンという自身の肉体から生まれるものとテクノロジーをうまく融合させ、自分の世界を作り出す。それは、知的なのだが肉体的でもある。
彼の紡ぐ音楽は、サウンドコラージュというよりは、KIshi Bashiの脳内で出来たものを自身の声とヴァイオリン、テクノロジーを肉体を通して具現化していく感じといってわかってもらえるだろうか。

ライヴでのKishi Bashiは、まさに知的な肉体性を発揮したものだった。
バンドは、ヴァイオリンとヴォーカルのKishi Bashiと、バンジョー、ベース、ドラムスからなる4P。
もうこの編成から面白いですよね。ギターじゃなくてバンジョー。しかし、それはバンジョー奏者のマイク・サヴィノ(aka Tall Tall Trees)の存在が大きいのかもしれないけれど。

Kishi Bashi のメインのヴォーカル用のマイクはメインのPAで直に行っているが、ルーパー用のヴォーカルマイクも別に使われ、ヴァイオリンも足元のルーパーとエフェクターを経由する。ヴァイオリンのエフェクトも足元で自分でかけている。
僕はPA卓の横でステージを見ていたが、実際にライヴ真っ最中のPAは、楽器の音量を調整するというのが主な役割でエフェクトに関してはほぼノーケアだった。
ルーパーではヴァイオリンやヒューマンビートボックス的なアプローチでループさせたり、ルーパーで録音したフレーズをピッチとスピード変えて他のループに重ねたりしてドリーミーな世界を生み出す。Kishi Bashiのルーパー使いは神でした。すごかった。ちなみに終演後、足元のエフェクターボードを撮影しておきました。
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4Pのバンド+ルーパーで生み出される音楽は時にイクスペリメンタルでプログレッシヴでもありポップでもパンキッシュなこともダンサブルなことも。Kishi Bashiの音楽的な幅広さが十分に発揮されていた。名曲「Bright Whites」で付け加えられたヴァイオリンには中近東風味さえも。

CM曲でもある「Philosophize in It! Chemicalize with It!」でスタートしたステージは、アンコールまで含みあっという間の1時間半だった。僕の記憶の範囲でセットリストを以下に記しておく。

Philosophize in It! Chemicalize with It!
Carry on Phenomenon
Bright Whites
Improv: Violin v. Banjo (Kishi Bashi and Tall Tall Trees)
Q&A
Hahaha Pt. 1
Hahaha Pt. 2
Wonder Woman, Wonder Me
Beat the Bright Out of Me
Evalyn, Summer Has Arrived (Kishi Bashi and Tall Tall Trees)
Bittersweet Genesis for Him AND Her (solo)
Manchester (solo)
I Am the Antichrist to You (solo)

Encore:
The Ballad of Mr. Steak
Live And Let Die (Wings cover)
It All Began With a Burst

観客のメインは20代、30代の女性。この人達は普段どんな音楽を聞いているのだろうと想像しても、想像できない感じ。外国人のお客さんも多かった。
アンコールではウィングス「死ぬのは奴らだ」のカヴァーも披露した。全米ツアーではZEPの「胸いっぱいの愛を」のカヴァーをやった日もあったようだからどっちかなぁと思ってたけど、この日はウィングスでした。

公演の翌日、NTVのスッキリにも出演したKishi Bashi。日本でのブレイクも近いかなと期待します。このKishi Bashi、この十年で出会ったアーティストの中で最も注目しているアーティストの1人。皆さんも是非!

 

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