プリンスのこと。

On 2016年4月23日, in 音楽, by dubbrock

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2016年早々に届いたデイヴィッド・ボウイの訃報にもガツンとやられたのだが、今回のプリンスの訃報にも驚かされた。デイヴィッド・ボウイの場合、素晴らしい新作が届くのと一緒に死がやってきて、驚くというか、最後までかっこいいというようなところがあった。

プリンスも新作『Hit n Run Phase Two』が届いたばかりだし、僕はその冒頭曲「Baltimore」はとても好きで愛聴しているところだった。しかし、ボウイの『ブラックスター』は、ボウイが死を覚悟して命を削って完成させた新作であり、作る側が最後の作品になると覚悟して作った作品だった。プリンスの『Hit n Run Phase Two』は、結果として最後の作品になってしまった作品だ。大きく違う。

僕のプリンスとの出会いは高校時代にさかのぼる。最初に買ったのは、セカンドの『プリンス』で、ラジオで聴いた「I Wanna Be Your Lover」がきっかけだった。でもリアルタイムで買ったのではなく、買ったのは81年ぐらいだったのではないかと思う。当時僕は17歳ぐらいだ。その頃はすでに3枚目『ダーティ・マインド』も出ていたはず。4枚目『Controversy(戦慄の貴公子)』が出た頃にはすでに欧米での評価も高まっていたし、セカンドも好きだったので、『Controversy(戦慄の貴公子)』を買うのは必然だった筈なのに、リリース直後は買わなかった。それは、プリンスの露悪趣味というか、音楽誌のグラビアなどで見るプリンスのエグい写真に抵抗があったから。でも次の『1999』で大ブレイクすると、そんなことも気にせず夢中になった。

最初は、殆どの楽器を自分で演奏しているという話に驚き、才能に狂喜し、『1999』のヴィデオ・クリップの美しい女性たちに夢中になり、いつのまにか虜になっていた。僕が最初に好きになったのは、「I Wanna Be Your Lover」だったから、ファンクのイディオムのアーティストと受け止めていたのだけれど、プリンスというアーティストと向き合うときにはいつの間にかジャンルというのを意識しないようになっていた。

『1999』以降は、ほぼアルバムが出るたびに購入してきた。『パープルレイン』『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』『パレード』『サイン・オブ・ザ・タイムス』…とほんとに凄かった。この時期の86年の初来日、横浜スタジアムにも足を運んだ。結果的にプリンスのバンド、レヴォリューションの解散ライヴともなったこの公演は素晴らしい体験だったし、ギタリストとしてのプリンスにも夢中になった。そして、『ブラックアルバム』問題。レコード会社との確執から正式にはリリースされなかったこのアルバム。インターネットのない時代、ブート盤がどこどこのレコード店に入荷しているらしいという情報を聞いて探したアルバム。その後すぐに『Lovesexy』がリリースされたわけだけれど、このあたりのゴタゴタがなければ、今見てる景色は少し違ったものになっていたかもしれないと思う。

その後、プリンスはワーナーと再契約し、レコード会社の副社長にまで就任したにも関わらず、レコード会社との関係はいいものとならなかった。アーティスト名をシンボルマークにしたり、契約を消化するためのようにも見えるリリースもあった。レコード会社とのいざこざが売れるレコードを作らせたい会社側と、自分の思う作品を作りたいアーティスト側の確執という簡単な理由で片付くことではないのはわかっているけれど、この確執がプリンスの創作活動を歪なものにしてしまったのは残念だ。しかし、プリンスがアーティストの権利問題を僕らに肌身を持って教えてくれたことは大きいことだった。

2000年以降では、『3121』『アート・オフィシャル・エイジ』とプリンス復活を感じさせる新作を放ち、最近の『Hit n Run Phase』もいい作品だと思う。

しかし、しかしだ。プリンスの才能はこれらのアルバムにはおさまっていないと、多くの人たちは思っていたのではないだろうか? 少なくとも、僕はそう思っていた。そんな中途半端なままでプリンスがいなくなってしまったことがショックで仕方ないのだ。『Hit n Run Phase Two』の美しいワルツ、8曲目「When She Comes」を聴きながら、僕は自分のあいた穴の大きさに驚いている。

 

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