待望の新作だったわけですよ。
CHRONIXX待望のアルバム。これまでにも作品は出ていますが、コレがインターナショナルなデビュー盤的な位置づけ。
冒頭曲からニヤニヤしちゃうわけです。昨年の来日公演でもやった曲ですが、根底を流れるのはバーリントン・リーヴィの「プリズン・オーヴァル・ロック」。カヴァーじゃなくて「根底を流れる」と書いたのは、「プリズン・オーヴァル・ロック」を咀嚼して新たな全く別の作品にしているんだけど、きちんと「プリズン・オーヴァル・ロック」が聴こえるというね。派手な曲ではないですが、ほんとぐっと来ちゃいます。CHRONIXXの父、CHRONICLEはバーリントン・リーヴィのフォロワーというかバーリントン似のシンガーとして頭角を現した人。父の存在なしに今のCHRONIXXはなかっただろうし、その父もバーリントンなしにはレゲエ界で人気を獲得することはなかったかもしれない。そんなことを考えながら、レゲエという音楽の連続性に思いを寄せるのが必然の冒頭曲で僕のようなおっさんはぐっと来ちゃうわけです。
ぐっと来た後に、何が起こるかというと続く2曲めで親父CHRONICLEが登場するわけです。バーリントン・マナーの歌唱でがっちり曲をリードし、歌もDJ、シング・ジェイなスタイルを器用に織り交ぜながらCHREONIXXが絡むという冒頭曲からの受けとしてはコレ以上ない作品でつながるわけです。ディーン・フレイザーと今年1月に他界したナンボ・ロビンソンによるホーンズにもぐっと来ちゃってね。
3曲目は、フランスのリズム・メイカー、Bost & Bimが制作した曲。冒頭に印象的なホーンが入ってると思ったらこちらにはマティック・ホーンズ〜テンユー兄弟のヘンリー・テンユーがトロンボーンで参加。続く4曲目もヘンリー・テンユー参加。
ガーネット・シルク「ギヴ・アイ・ストレンクス」のサンプル・ネタを含む5曲目ではキンゼイ・リポートのドナルド・キンゼイがギターで参加…
なんて参加ミュージシャンのことばかり書いてたって面白いわけじゃないのでコレぐらいにしとくけど、人気ドラムンベース・アーティストのルディメンタルがプロデュース参加した曲「ロンリネス」なんて曲もあって、その曲のサウンド・プロダクションはちょっと毛色が変わっているのだけど、でも物凄くレゲエなんです。CHRONIXXが中心にいるとレゲエになるという強い磁力を持ってるわけで。
CHRONIXXのことを簡単に言ってしまえば、新しい世代のルーツ・アーティストなんだけれど、シンガー・パートではわかりやすいシンプルな言葉を選び、リリックのわかりやすさに重きを置き、ラスタのことやジャマイカのルーツのことを歌いながらも普遍性を持たせようというCHRONIXXのセンスは他のジャマイカのアーティストとは見ている地平が違います。ジャマイカへの愛はありながらも目線はインターナショナル。そういう意味ではボブ・マーリーとの近似性を感じない訳にはいきません。
FUJI ROCKで来日もするので、会場に足を運ぶ方はぜひ彼の勇姿を見てください。 しかし、まずは今日7月7日に発売となった『CHRONOLOGY』を聴いてください。24歳という若きジャメイカンが世界に問う『CHRONOLOGY』を是非みんなで感じて欲しいのです。今こそ聴くべきアーティスト、聴くべきアルバムです。2017年、このアルバムを聴かずに2017年のレゲエは語れません。
久々に、藤川さんが現行のレゲエアーティストの文章を書いてるのを読めてとても嬉しいです!
自分は、初めて買ったレゲエのCDがビーニマンの「ART AND LIFE」だったので、日本盤に封入されていた藤川さんのライナーノーツも本当に穴が空くぐらい読みました。
昨年、ロッカーズチャンネルでBEENIE MAN特集を書いた時、久々に読み返していたのですが、10代の様々な思い出が蘇ってきて少し「じーん」ときました。
「レゲエという音楽の連続性」の中に、ぼくも居ます。
コメントありがとうございます。
現行のレゲエももちろん聴いているのですけどね。なんだか僕は古いの担当みたいな感じもあったりして、古いレゲエのこと書くことが多いですね。
ちょい前ですが、シャムのマッドハウスの「ゲット・ドランク」とかヒートウェイヴの「ロンドン・シティ」とかも。
年取れば取るほどレゲエの連続性を強く感じて、逆にモダン・ダンスホールを面白く聞けます。